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うきうきマンドリル

鼻の角栓抜くのの次くらいの暇つぶし

鳥の巣パーマ

ただの日常

自活力のない雛が息も絶え絶えに横たわっている。その姿、息遣いに生気は感じられない。死ぬに死にきれない生命体が一羽、弱弱しく。

 

鳥の巣。生まれたあとの卵殻、糞便、抜けた体毛がいっぱいに敷き詰められている。雛の目元は薄皮一枚の眼瞼によって固く閉ざされている。黒色を透かせて見せる瞳孔。薄明りのなか、その光を受容し知覚している様子は見られない。まれに喉の奥から発せられる唸り声は草木の擦れ合う音に等しい無機質さ。雛の意思はともかく誰のもとへ届くはずもない。かつて声枯れ果てるほど鳴いたのか、はたまた鳴き方を忘れてしまったのか。

 

小鳥も飢餓にさらされると胴が大きく膨れ上がるようだ。羽根の禿げた腹部の盛り上がりは雛の体長とは不釣り合いで、不気味というほかなかった。口を開けて上を向きぴぃぴぃと囀る、そんな当たり前とされることができなかった。雛不適合を自覚するのには悲しくもそれほど多くの時間を必要としなかった。生きている意味も見い出せず、ただ親鳥の帰来を待つ。待って、待って、それだけで一日の活動を完結する空間。

 

憐れんで手を差し伸べたりしちゃいけない。人が触った匂いのついた雛は、親鳥が世話をしなくなるから。

 

 

 

 

日中最高気温とは関係がなく暖房機器が唸る。外からの影響に構ってやる余裕はない。ここはいかなる時も変わることない一日が完結する空間なのだから。縮れ毛が、綿埃が暖気に舞う。舞っているような気がする、鼻腔のこそばゆさ。カップ麺の空き箱、脱ぎ散らかしたネルシャツと下着、4億の生命の墓場、ことクリネックス。不安を煽る風音。巣の前を隣人が、ヒールの音を響かせ通り過ぎる。

 

締め切られたカーテン。活動範囲は腕を伸ばせば届く外周。分類されずにベッド一面に散らかされた書類が寝床を占拠している。ベッドからずり落ちた厚手の毛布に包まり、冷たい床に体温を奪われながら眠る。おもむろに上体を起こし、ノールックで2L入りの水のペットボトルを掴もうと手を伸ばす。距離を誤りボトルを倒す。健常ならば慌てて立て直すが今はそんな気力がない。倒れた、と察した直後、中身は勢いよくこぼれ出し、音もなく生地の薄いパジャマを浸す。冷感を受け取ったはずが目に見えた反応を見せない。どうせ拭き取らなくても乾燥すれば元通り。このルールはお茶のボトルでも採用される。牛乳パックを倒したときは跳ね起きたけれど。

 

誰か。この水が全部干上がり、積もる羽根で床が見えなくなるその頃までに、誰か。手を差し伸べて下さい。施しでも、殺処分でもいいです。