うきうきマンドリル

鼻の角栓抜くのの次くらいの暇つぶし

男も悪くないなあ

一般的な男がそうであるように、僕ももれなく、女性が、できれば容姿の美しい女性が相手してくれることを望んでいた。男の悲しいサガだ。

僕は月イチのペースで、そういうお店に通っている。経済的に豊かな大人たちはこれを目当てに毎週でも、毎日でも通っているとお店のお姉さんが言っていた。僕も将来成功した暁には毎日通いたい。それが社会的にも成功者の証となる。僕はこの店の味を覚えて数年来、そういう結論に至った。

そんな僕の常識が今日この日に大きくくつがえされた。

「お願いしますーっ」

そう言って待合席に座っている僕に歩み寄ってきたのは、予想もしなかった男の姿。美大生を思わせるような、普通の若者とも違った奇抜な見た目。明るく染められた頭髪、ガラの悪い服装。骨張った、静脈の浮いた腕。

「ちぇ・・・」

思わず「チェンジ」と言いかけた。しかしこういった軽率な発言が今後のお店での僕自身の扱いに少なからず影響を与えることを思うと、ここはグッと抑えて、この男の存在を受け入れるほかなかった。客の権利だと主張して失礼を押すのは男としてこの店を訪ねた身としての示しもつかないのだ。予約時に指名をしておかなかった、僕の過失だと自分自身に言い聞かせる。

「それでは失礼しますーっ」

事(コト)は突如、なんの前触れもなくおっぱじめられた。仰向けに寝かされるやいなや、激しい手つきでコスリあげられて、僕は声が出てしまわぬように気をつけながらも息を漏らす。先っぽを一定のストロークでゴシゴシとやられる瞬間の快楽に僕は、早くも昇天寸前。その荒々しい手つきは女性の繊細な指先で優しくコスられるのとは一味違った良さがあり、今まで女性の経験しかなかった僕に新しい世界への扉を、その骨張った手でもって開いてもらえた気がした。ひとしきり事を終え、湯ですっきりと流してもらう。体を起こして、渡されたおしぼりで顔を拭く。

「はぁ、キモチよかった・・・」

思わず、心の声が口からこぼれてしまった。

「こちらの席へどうぞ、カットやっていきまーすっ」

 

美容院のシャンプーってどうしてあんなに気持ちいいんでしょうね。自分で頭を洗うときにどれだけ真似しても、その10分の1も気持ちよさを再現できないのですが。シャンプーだけのために頻繁に美容院に通っているセレブもいると聞くが、そのコストは全然無駄ではないと僕も思う。今までは若いお姉さんの細指で優しく洗われるのが月に一回の楽しみでしたが、案外男の、しっかりと力のこもった指圧も悪くないなあと思ったっていう、今日の日記でした。