うきうきマンドリル

鼻の角栓抜くのの次くらいの暇つぶし

そうだ 書を捨て、京都へ行こう(秋の学生一人旅レポ)

「大学時代は人生の夏休み」と散々聞いてはきたが、僕はこれまでの3年間の大学生活で自由らしい自由を感じたことがなかった。

親のすねかじりで大学に在籍しながら、朝に寝て昼に起き、大学に行かずにインターネットの海に漂う今の生活も一つの自由の形なのだろうが、僕自身がその生活を肯定的にとらえられない限り、僕は自由でなかった。

この京都旅行は立川志の輔独演会を観に行くために計画されたものだった。さもなくばこんな、紅葉全盛の一歩手前のような時期に京都に行ったりはしない。もう2週間待つ。

その独演会が18時開演だということだけがこの日の唯一のスケジュール。それ以外の計画はほとんどを当日の電車内で決めた。観光先の候補はあらかじめブログでたくさん寄せて頂いていたのに、有効活用できなくて申し訳ない。宿すら取ることすら間に合わなかった、ポンコツな性格を許してほしい。

結果的に今回の旅の拠点は河原町であった。滞在2日間は天候に恵まれなかったが、京都市内の歩道はどこもかしこも屋根付きの商店街であり、ぱらつく雨の影響をほとんど受けない。

(サーティワンですら京都を押してくる町、それが京都)

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 京野菜を使った天丼を食す
ことを勧めてくれたのは関西住みの女子大生だった。哀しいかな日常では一切無縁であるシャレオツな価値観に触れる、絶好の機会。

昼と夜とで営業時間が分かれていないのがありがたかったが、3時過ぎの来店で客は僕一人だった。注文を済ませ、静かな店内で油のはねるペケペケ音に耳をそばだたせる、この時間は最高の贅沢である。

(気を抜くと通り過ぎてしまうような商店街の一角)

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(ツルムラサキの花、その他野菜、きのこの天ぷらが乗った美久仁の野菜天丼。旨そうに写真が撮れなかったのは美久仁の落ち度ではなく僕サイドの責任である・・・)

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 そして河原町を散策する。大阪道頓堀では行列を作るたこ焼きの有名店「わなか」もこちらの支店では閑古鳥が鳴いていて寂しい。通りすがる外国人御一行に「どぅーゆーらいくでぃす!?」と店員が声を掛けている。

旅行者としてではなく、学生としてこの町を歩きたいと心底思った。地元民のように身軽であれば寄ってみたい、個性に満ち満ちた店がたくさんある。時間さえ許せばどこまででも歩いて行けるような気がした。

かつて寺山修二も言った。「書を捨てよ、町へ出よう」と。やはり大学生は都会に住まなくてはいけない。ニート学生に引きこもりを許すような町は、ダメだ。


 夕暮れ、独演会の会場へ向かう道すがら、鴨川デルタに立ち寄った。ここでは近くの和菓子店「出町ふたば」で名物・豆餅を買い、鴨川を望んで食すのだ。辺りが薄暗くなり、さらに雨も強くなっていた。

(終始悪天候の中、唯一撮れた明るい鴨川)

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(これも読者さんに教わった店だが、夕方の和菓子屋の混み具合にしては異様だった)

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(いや、名前どっちかに絞れや)

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(地元カップルの語らいの場だと聞いていたが、初の一人旅での鴨川の雨は冷たく、豆餅はほの甘さの中に確かな塩気があった)

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その後、志の輔独演会を観賞。あまり読んでもらえていないがレポは別に投稿した。

rickey.hatenablog.com


 独演会が終わり、満足感に浸りながら駅行きのバスの乗り場へ。次は天下一品の総本店だ。グーグルマップを起動すると、なんと目的地まで徒歩5分と表示される。劇場の近所だったのだ。行き当たりばったりの旅計画がここだけ突然効率化された

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(旅先での開放感が僕に珍しくグラスビールを注文させた。PARTYが・・・始まるよ・・・!)

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自分の行きたいところに行き、自分の食べたい物を食べ、自分の観たいものを観て、自分の歩きたいペースで歩き、歩き疲れれば自分の好きなタイミングで休憩する。

僕は今回の旅で身をもって自由を感じた。同時に自分の性格が一人旅に適しているということに、この年になってようやく気付いた。僕が求めていた自由は、自分の足で歩くことで得られたのだった。「365歩のマーチ」が脳内に反響していた。


 こってりラーメンを腹に収めて、夜10時過ぎ、再び河原町に戻る。そこからしばらく歩くと木屋町通という通りに出る。この通りは、僕がつい最近ハマったアニメ「四畳半神話大系」の舞台の一つである。人気のない通りに得体も知れない妖気を垂れ流した占い師の老婆がいて、主人公に助言をするのだ。 ここはひとつ、その妖しい空気を体感して帰りたい・・・

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僕がまず目撃した木屋町通の現実は、ファミマの前で清純そうな見た目の美女3人とホスト風の男がコールを掛け合いながらコハク色の液体の入った小瓶を回し飲みしている光景だった。僕は眩暈を感じた。アニメと違う。話が、違う。さらには歩けば30秒に一度、キャバクラの客引きに声をかけられる。

僕は逃げるように居酒屋「赤ひげ」に駆け込んだ。これは同じくアニメ「四畳半神話大系」で主人公とその悪友がしばしば飲食をする居酒屋「青ひげ」のモデルになった店である。京都に来ておいて沖縄料理屋だが、やむを得まい。

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(1階のカウンターに掛ける。上の階では大学生たちのドンチャンな飲み会が執り行われているようで騒がしい。そういえば最後に飲み会に参加したのはいつのことだったか。ここにも僕の安息の地はない?)

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(とりあえずのオリオンビール)

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(シンプルなゴーヤチャンプルーは頼まない手はなく)

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(豚耳のポン酢和えはビールのつまみとしてまさに無類の味であった)

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調子に乗って泡盛もロックでイった。旅の開放感からだろうか。店主がスリムクラブのツッコミに瓜二つなのに気を許したのだろうか。天下一品を腹に入れていなかったら、ヤギの刺身、鹿刺し、ラフテー、ソーキそばも試したかった。メニュー表は魅惑のラインナップだった・・・


 ほろ酔いのなか店を出ると、再び現実に引き戻される。

恰好ばかりが派手なホスト3人組が美人2人組に声を掛けている。

「ホストクラブなんですけど、いま飲み放題70分で500円なんですけどいかがっすか」

「えー!70分500円で飲めるの?イキマース↑↑」

即答だった。確かに破格だが、躊躇、警戒という言葉を知ったほうがいい。ホモサピエンスの面汚しめ。女たちは夜のとばりへと消えていった。

浅ましい。浅ましく卑しいが、それが何より羨ましい。あれこそが僕の夢描いていた、めくるめくバラ色生活ではなかったか。それでいて永遠に交わることのない平行世界。都会に住もうが陸の孤島に住もうが、かような桃色遊戯をこなす連中とは一切無縁の人生を送るのが僕なのだろう。

ナニが「書を捨てよ、町へ出よう」だ。ナニが「大学生は都会に住まなくてはいけない」だ。少しでも気を許した僕が馬鹿だった。下宿先の万年床こそが僕には相応しい。今夜はひとまずネカフェにて日の出を待つ!

おわり

【京都旅行関連】

①京都に着く前に終わった日記

rickey.hatenablog.com

②2日目の京都観光

rickey.hatenablog.com