うきうきマンドリル

鼻の角栓抜くのの次くらいの暇つぶし

【ボッコちゃん/星新一】ショートコントはクスリとくるもの

僕が星新一に初めて触れたのはちょうど1年ほど前のこと。ネットでおすすめの小説スレのような場でよく持て囃されている印象のあった作家の作品が、土曜プレミアムにてドラマ化されていたのを観たのです。2時間で5話くらいの構成だったような気がします。そのときの感想としては、世にも奇妙な物語のようなテイストのストーリー、別に目新しくもなければ、正直つまらない。でした。しかしネットでちやほやされているショートショートなるジャンルがこの程度で済まされるものではない、とすぐさま思い直しました。ドラマ制作の過程に問題があったに違いない。原作に触れてから改めて判断を下そう、そう思いました。

 

その日にそういったブログを書いた記憶があります。先日ブログを畳まれたブロガーさんにコメント欄にて短編集「ボッコちゃん」を勧めていただき、その翌日には紀伊國屋書店に走りました。僕の好きな面白いブログを書く人は皆が皆読書家であり、面白い日記を書く秘訣は多読にある、と常々思っています。今回の推薦者も創作力を羨ましく思っていた人なので、買いだ!と思ったのでした。半分ほど読み進めたあと、1年間も積んでしまっていたのですが。

 

ボッコちゃんは星新一の自薦50作だとあとがきに書かれていたので、星新一のエッセンスが詰まっている質の高い短編集だと期待できます。それでも当たりはずれはあり、オー!ブラボー!と叫びたくなるものがある一方で、「なんじゃそりゃ」で一蹴したくなるものもあり。2ちゃんまとめサイトの「オチがわかると怖いコピペ集めようぜ」と同じ趣向だと感じたのですが、同じ活字を目で追うにしても、姿勢をある程度正して紙のページをめくるのと、布団の中でスマホでネットサーフィンとしてスクロールするのでは手軽さがまるで違いますよね。

 

話は短くまとまって皮肉の込もった要素も凝縮され、テンポよく読めるのはたしかなのですが、好みの問題として、僕は長編小説のほうが好きだと感じました。もっと長い時間をフィクションの世界に没入していたい。話のネタのコアは十分評価できるものでも、「それについてもうちょっとダラダラ味わいたかったな」という消化不良を感じてしまう瞬間が多々ありました。スルメを一噛み、二噛みするかしないかといううちに口をこじ開けられて取り上げられてしまうような。もののたとえが失敗している気がしますが。不条理な男の末路を、一歩引いたところから「カワイソス、、、」とみているのではなく、彼と一緒に悶絶したい、と言いますか。そのためには、登場人物に感情移入するための時間がもう少し必要なのです。5ページで終わらされた世界観を、二次創作として300ページに引き伸ばしたいのです。しないけど。

 

好きな短編をベスト5で選ぶなら上から、肩の上の秘書。親善キッス。暑さ。ボッコちゃん。鏡。読み返すとしたらこの5編ですね。設定の面白さと風刺の加減が好きでした。最終話「最後の地球人」は科学が行き着くところまで行き着いた世界の描写が印象的でした。「まあ、こうなるだろうな。でもどうせ僕は生きていないし」という危機感のない緩い感想です。40年前に書かれたと聞くとすごいですね。最後の一人が創造主となり無限ループ・・・というオチは、正直いらなかったです(笑)

 

こんなにダラダラ書くつもりじゃなかったんですが、今回のショートショートというジャンルに対しての感想は、お笑い芸人のコントを見ての感想に似ていることに気がつきます。リンク上は野生爆弾のバラエティ番組イロモネアでの30秒のショートコント(4分25秒~)。下はラーメンズの15分、テレビではあまり見ない長尺コント。どちらもクセの強い、とても見応えのあるネタをする芸人なので、初耳の方はYoutubeで動画を見漁ってくださればいいんですけども、これを比較してみましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=_fSd8s1ZiRw&t=265

 

https://www.youtube.com/watch?v=v_NjqbzvRc8

 

野生爆弾のショートコントは涙が出るくらい爆笑できますが、ラーメンズのコントはオチのあとの暗転で「いいもの見せてもらったなぁ」としみじみと感じ入ります。ん?涙出るくらい爆笑できたらそれで十分じゃないか?

 

今回の比較は両者ドロー。もののたとえが完全に失敗していますね。終わります。

 

(追記)野生爆弾ではなく「野性」爆弾でした。ウィキペディアを読んでたら

東野幸治は「イギリスのアホ」と形容した。

 の一文に笑いました。