名作、名作と聞いてはいたがこれほどのものとは思わんだ(バタフライ・エフェクト)
言わずと知れた名作映画だから僕が今さら書くこともないのかもしれないけれど、未視聴ならば是非明日レンタルビデオ屋に駆けことを強く勧める
この世には山ほど名作と言われる映画があり、いつか時間ができたときに観ようと各々が思い描く作品のリストがあるだろう
しかしバタフライエフェクトは、「あとで観るリスト」に加えたまま死ぬまで埋もれさせておくのにはあまりに惜しい作品だ
ジャンルとしてはSFのタイプリープもの(タイムスリップ)
映画経験が年齢に伴っていない僕だが、タイムリープものといえば古いものではバックトゥザフューチャーから始まり、オールユーニードイズキル、アバウトタイム(マイナーだけど)、四畳半神話体系(アニメだけど)、僕だけがいない街(アニメだけど)などいくつかの作品には触れている。ドラえもんもかタイムリープものかな(笑)
それでいながらこの2004年公開の作品が決して古臭くなく、むしろ極めて完成度の高いものであることに驚きを禁じ得ない
僕はネタバレ無しの器用な作品紹介はできないのでここから先はネタバレしまくるが、未視聴の人は是非とも前情報無しで観てほしい
以下ネタバレ注意
バタフライ・エフェクトあらすじ
幼少期からことあるごとに記憶喪失を起こしそれに悩まされるエヴァン。脳に異常は見られないようだが、どうやら精神病棟に入れられている父親も同様の症状を経験したようだ
大学生になったエヴァンは記憶についての研究に取り組み、幼少期から治療の一環としてつけている日記を読み返すことで失われた過去の記憶を呼び起こし、さらにはその過去を修正する力に目覚める。
過去を修正する力を使って幼馴染みの不幸を修正するために奮闘するが、過去を変えることは思いがけない第二の悲劇をもたらすことになってしまう...
と、あらすじはこんな感じかな?
伏線回収がキモチイイ!
ストーリーが進むにつれて、「記憶が抜け落ちた箇所」があるのはのちにエヴァンがタイムリープを実行した後が残っているからだということを視聴者は知る。
防衛本能で嫌な記憶に蓋をしたのだと普通なら発想するので(いかついデブのルームメイトもそう言ってた)この騙しは面白いなぁと。
少年のエヴァンが台所でナイフを握り棒立ちしてるシーンはオーメンを連想させたが、彼は悪魔の子ではない。
学校で描いた絵が恐ろしいものに出来上がっていたことも、父親が面会室でエヴァンの首を絞めるところにもちゃんと意味があった。
サイコスリラーと見せかけて、本当は誰一人狂っていないことを記憶の整理の過程で知る衝撃
背筋がゾワゾワした
ストーリーは全体を通じて至ってシリアス
エヴァンのタイムリープ能力が気楽に発動ものではなく、激しく痙攣して時に鼻血を垂れ流しながら行われるのも重みがあって良い。
ストーリーは全体を通じて至ってシリアスであり、タイムリープものにありがちな天丼のギャグはほとんどない
強いて言えば事故で手足を失い、目を覚ますと横で本来恋人であるはずの女性ケイリーが友人ポリーとファックかましてる部分はブラックジョークで、その続きとして少年院に入れられるはずのトミーが極端すぎる改心を果たしているところぐらいか
ポリーとケイリーが結ばれるルートは、最近見た深夜アニメを思い出させた。嗚呼、加代ちゃん...
「過去を修正することで思いがけない悲劇を未来で引き起こすことになる」というストーリー展開はタイムリープもので決まって扱われるテーマだ。
神にでもなったつもりか、おこがましいと説教される。
本人は良かれと思って過去を修正するのに些細なことがとんでもない大事を引き起こすもどかしさ。
そしてエヴァンが出した結論は...
思わず声が漏れた
こんなにシンプルで切ない愛の示し方があるのかと
でも友人や恋人の悲惨な運命が変えられるのならば、僕もこの選択をするだろう。最善のエンディングだと思った
しかし重い。視聴後しばらく呆然としてしまった。
実はこの作品、公開前には別のエンディングが用意されていたようだが、訳あって差し替えられたのだという。
その真のエンディングはDVD(非レンタル)に収録されているそうだが、これを確認する前に他のブログのレビュー記事でネタバレを読んでしまった。エンディングの差し替えは成功だと思った。
バタフライ・エフェクトは2と3もある
バタフライ・エフェクトはシリーズもので3作が公開されている。シリーズものとは言ってもストーリーに繋がりはなく、タイムリープの能力に目覚めた主人公という共通点があるだけらしい。だいたい映画監督も別人だ。
ネットの評価を見ると「2」は二番煎じで箸にも棒にも引っかからないが、「3」はまだマシとのこと。
駄作と分かっていて「2」を観るほどの寛容さは持ち合わせていなかったので、ストーリーの繋がりがないのをいいことに「3」を観賞。
しかし頭の片隅にある原作「1」の偉大さを再認識するばかりで、どうも物足りなさを感じてしまった。
そもそも上で、「サイコホラーと見せかけて実は理性的なサスペンスであるという騙しが面白い」と書いたが、3の黒幕は立派なサイコさんなのだ。
「「バタフライ・エフェクト3」」ではなく、別のタイトルとして君に出会えたならばきっと大満足の内容だっただろうに。最後のネタばらしはとても良かった。それだけに悔やまれる。
こんなときに人はタイムリープしてみたくなるのかもしれない。